《Interview》廣久葛本舗 十代目  高木久助さん

div class="school_page_t">

Wholefood Interview

廣久葛本舗 十代目 高木久助さん

 

− 江戸時代から変わらない、200年の伝統の本葛 −

 

| 高木久助 プロフィール | 

天然純国産本葛製造専門店(株)廣久葛本舗の十代目。文政二年(1819年)創業から200余年、福岡秋月で葛屋を営む。日本で唯一の本葛全量九州産100%を誇る。かつては筑前秋月黒田藩御用達、皇室献上品の栄誉を賜る。大学卒業と同時に九代目 高木久助に師事し、本葛の伝統的製法を取得し現在に至る。

廣久葛本舗

http://www.kyusuke.co.jp

 

200年以上の伝統と歴史を持つ廣久葛本舗の十代目として、これまでどのようなことを伝えてこられましたか?

葛の原料がどのようなものなのか、あまり知られていません。まずは葛は植物が原料であることからお話します。
本葛(本くず粉)の原料となる葛の根を、我々は「寒根(かんね)」と呼びます。大きいものだと、背丈ほどになるものもあります。収穫時期は、12〜3月の間だけ。
私どもは自然に任せて作っているので、半日日陰干ししてから葛蔵で2ヶ月間日陰干し、それから半年から1年寝かせて自然乾燥させていきます。

我々の本葛の原料は、全て九州の山野に自生した天然の寒根葛の根だけを使用し、本葛100%です。
葛粉として一般に売られているものは、実は混ぜ物が多いのです。葛粉と書いてありますが、数%入っているだけ。それでも葛粉と書いてあったりします。
じゃがいもやさつまいもなどのでんぷんと混合されていても、業界的に“本葛”と呼ぶこともあります。法律の規制がない分野なのです。
「吉野葛」はあくまで商品名で、原産地に鹿児島と書かれていたりと、実際は吉野ではない場合も少なくありません。

意外なようですが、混ぜ物の葛は世の中の様々な食品に使われています。大手製パンメーカーも、水まんじゅうや団子のとろみづけに大量に使います。
私どもの目指す本葛は、安心安全な本葛。大量に作り続けるためには、もちろん私どものようなやり方はできません。
世に出回る葛は、作るときに薬品を使っています。
石灰水を投与し、それを中和するために硫酸を入れ、本葛の製造工程で泡がたたないように消泡剤を、そして本葛を早く白くさせる為の漂白剤を使用すれば、大量に作れてしまいます。乾燥も主流はボイラー乾燥、短時間で乾燥できます。

ワークショップでその実態をお伝えすると、驚かれますね。
「本葛は体に良いイメージで買っていたのに!安いものに薬品が使われていて健康に良くないだなんて、今まで食べていたものは何だったの?」と。
今では、全国からワークショップで呼んでいただくことが多くなりました。消費者の方々と直接お話することはとても大切なことです。

*詳しい製造工程は、廣久葛本舗H Pからご覧いただけます

http://www.kyusuke.co.jp/seizou/index.html

 

変わる時代の中で、200年変わらない本葛づくり

かつての高度経済成長期は、「とにかく大きいことはいいことだ」「添加物をいっぱい使って安定して大量に作る」「全国のスーパーに商品を入れる」「全国津々浦々、消費者に届ける」「利益を出し、会社を大きくする」ということが良し、といった価値観がありました。
添加物も、国が認めているから大丈夫でしょう、という風潮だったのです。
これからは工業化よ、と。だから、〇〇食品工業株式会社、という名前が流行で、伝統の〇〇商店、というのは古臭いと思われるような時代です。

その時代は、我々の本葛は大量生産品と同じ土俵で比べられると、消費者からは高いと言われます。業界では、必要な時に必要な量を揃えられないから、ダメとなります。
しかし、消費者は混ぜ物があることは知りません。
ナショナルブランドで、でっかいことをやるのが勝ち。おかしなことがあっても、右肩上がりで伸びている時代は、いろいろな矛盾を打ち消してしまう。
しかし私どもは、江戸時代から今まで、やっていることは変わりません。

 

近年の食意識と大切にしたいこと

「なんちゃって本物」が増えましたね。
何でも「無添加」。しかし、裏面を見たら厚生労働省が認可している、いろいろな食品添加物が入っている。「国産」というのもそう。国産はほんの少しで他と混ざっている。国産100%と書いていないからウソではないと。
それを消費者は分かりませんよね。
だからこそ、ワークショップが大事なのです。目の前で作って目の前で食べること。

タカコ先生には、ワークショップに呼んでいただいたり、生徒の皆さんを連れて私どもの鹿児島工場に本葛作りを見学していただいたり、本葛の原料を実際に山に掘りにいったり。夜はタカコ先生みずからホールフードの料理をご馳走になり、大変懇意にしていただいております。
同じ理念の人とつながっておくのはとても大切です。共通の思いを持つ方々とのネットワーク。
ホールフード協会は同じ思いで頑張っている人がおられるので、励みになりますね。

 

これからの「日本の食」のあり方

衣食住の中で食は、自分の体を作る大切なことですが、衣・住がともすれば優先され、食が一番後回しになっているのではないでしょうか。
かっこいい車・はやりの服・趣味・スマホにお金をかけ見栄えのよいライフスタイルを維持するために、一番削りやすい食にお金をかけていない傾向になっているように感じます。
日本人は、どうしても外の世界からはいってくる物をありがたがる傾向にあります。
ハーブは日本では古来からある漢方薬、乳製品の発酵食品は日本では味噌・醤油・納豆・漬け物、スローフードは日本では伝統食品、ベジタリアンは日本では精進料理と、元々日本にある物ばかりです。もっと日本の食をもう一度考え見直しをする時期に来ています。

残念ながら、多くの方は、病気にならないと食の大切さがわかりません。
自分の健康・家族の健康が気になった時、食事の大切さを感じた時、まずはワークショップに参加することではないでしょうか。

ここ最近の新型コロナ禍で、日本人の食、普段から感染症にかからない免疫をアップする食事や体作りと、これからホールフードの活動がもっと求められる時代になるのではないかと思います。