おいしい水を求めて足助へ

三河醸しツアーの収録前日、全工程の下見をすることになった。
ロケ班2名と私で、本番の撮影スポットや周辺の風景などをチェックするため。
日東醸造の工場を視察。今回は時間も限れているため、日東の看板商品「しろたまり」の仕込み蔵の足助には、行かず、本社工場のみ撮影することになっていました。
工場は何度も拝見しており、けっして楽しくないわけではなく、白しょうゆの工程を知ることは十分できます。
でも、足助の蔵の素晴らしさや里山の自然の美しさを知っている私にとっては、工場の撮影は、正直、見劣り、複雑な思いがこみ上げてきました。
工場を後にしたとき、私は、カメラ担当の小山さんに抑えきれずに、
「日東醸造は、足助を撮らなければ意味がない」
「なんとか、足助に行けないでしょうか」とついに口から出てしまった。
小山さんは、「タカコさんがそこまで言うなら、そうしましょう。なとか調整してみましょう」と快諾。飛び上がるほど、うれしかった。

翌朝、薄暗い中、日東醸造の社長、蜷川さんがホテルに迎えに来られ、私たちは一路、足助村に向かったのであった。足助は標高も高く、途中の紅葉の名所「香嵐渓」は色鮮やかに染まっていた。

足助蔵に到着すると、まず蜷川さんは足助の蔵を守る「水神」様を紹介してくださった。
碧南市から車で1時間半離れた足助に仕込み蔵を作ったのは、究極の白醤油を作ってみたいという先代会長の思いからはじまった。
醸造において最も重要なのは「水」。ミネラル豊かな天然水で「しろたまり」をつくりたいと愛知県の奥三河、足助町の山あいの集落の湧水をみつけたのでした。
閉校となった「足助町立大多賀小学校」に残っていた井戸からはおいしい水が湧き出ていました。
平成11年に小学校の校舎を外観はそのまま内部を改装し、昔ながらの木桶を設置し、「日東醸造足助仕込蔵」を開設されました。標高が高く、夏も涼しいため、しろたまりの色づきを抑えることができる場所でもあった。
「しろたまり」は通常の白醤油の2倍の小麦麹(当社比)を仕込みに使い、濃厚に仕上げたしろしょうゆなので、 しろしょうゆの「たまり」という意味で命名。

途中、「しろたまり」の苦難についても少しふれておきたい。
「しろたまり」は大豆を使用していないため、JAS法では、少量の大豆を使っていることがルール。そのため名称を「しょうゆ」とは表記できず、「小麦醸造調味料」と表記せざるを得ない大きな醤油ハンデキャップが。
少しだけ大豆をいれて「しろ醤油」として売る選択もあったのだと思います。
しかし、蜷川さんは、増えてきた大豆アレルギーの人も安心して食べられる醤油でありたいと考え、小麦と塩だけで作る「しろたまり」にこだわったのでした。
蜷川さんは、そんなハンデを払拭するために、全国各地で「しろたまりワークショップ」を開催されてきました。
受講者は2000人を超え、「しろたまら〜」と称するファンも急増中です。「しろたまら〜」と同時に蜷川さんファン「がわら〜」ももちろん、急増中。
工場前では、隠し芸?いや若い木桶職人を応援する「タガフープ」まで披露してくださった。

蜷川さんは顔をくしゃくしゃにしてよく笑います。猫が好き、お酒も好き、情に厚く、三河エリアでは、諸先輩のパシリと自負され、人のために走り回る日々。
三河醸しツアーのロケ、本来は、案内役は蜷川さんであるべきだと思う。
事前の打ち合わせで、出演者ということで、今回のナビゲーター役はタカコナカムラでいこうということに。誠に残念。
ロケ中も、早朝から運転手、2日間ずっと共に撮影を行い、途中、待ち時間も半端ではなかった。時間調整、次の訪問先のアポ・・・・蜷川さんなくしては、撮影は取り切れなかったと思われます。

蜷川さんの名ガイドっぷりで三河の蔵を巡る日がくることを心から願います。

◎三河醸しツアーはこちら

http://whole-food.jp/association/三河醸しツアー/