《Interview》株式会社 ほうろく屋 代表 杉崎学 さん

Wholefood Interview

株式会社 ほうろく屋 代表

杉崎学 さん

− 唯一無二、杉崎学のほうろく菜種油を伝えて −

 

| 杉崎学プロフィール | 

1970年、愛知県西尾市生まれ。ヤンチャな少年時代を過ごし、25歳で起業して4年目で年商8000万円を超える。しかし多忙で疲れ果て、島根県隠岐で 数年の自給自足生活へ。周囲の笑顔が自分の生きがいだと気づき、2005年に西尾市に戻って循環型地域コミュニティづくりに邁進。2012年にほうろく屋を創業し、今に至る。

 

株式会社 ほうろく屋

https://hourokuya.com

 

 

 

〇手絞りの製油工場で丁稚奉公

 

実は、僕はもともと油屋がやりたかったわけではないのです。

やりたかったのは「若者の仕事体験の場をつくる」こと。

若者が働きに出るためのリハビリとして「9時~17時の工場勤務」の体験をできる場所を探していたのです。するとたまたま近所の製油所のおじいちゃんが、「もうおらぁ後継ぎもおらんし、もうやめるわ」と。そこで「どうせやめちゃうなら、子供たちのために油搾りしたいので、教えてくれ」と申し出たのがきっかけでした。

そうして、僕の油搾りの師匠、先代「大嶽(おおたけ)製油所」大嶽喜八郎のところに飛び込みました。

そこから丁稚奉公に入ったのですが、毎日お昼にまかないを食べさせてくれました。

奥さんが作ってくれる炒め物、揚げ物、小麦粉を揚げたような油菓子、何を食べても美味しいんですよ。何でこんなに美味しいのか?と考えたら、油だ!と。

そこで油の美味しさに気づいたんです。

 

 

◯ 菜種油の美味しさに惚れ込んで

 

大嶽製油所の創業は、昭和24年。夫婦2人の小さな手搾りの町工場でした。当時の日本は高度経済成長期、ヘキサンを使用した溶媒抽出法で、簡単に大量に、安価なサラダ油を量産する時代。愛知県に30軒ほどの町工場が点在していた菜種油屋も、1軒ずつ倒産していきました。

油を使わないメニュー、油を使わないフライパン。どんどん進む油離れ。トランス脂肪酸など、油が体に悪いものというイメージさえあります。

でも、僕たちの体は、内臓にも脳にも油が使われています。体に必要なものが悪者にされてしまっている。

本当は、良質な油、塩、水を摂ることが大事で、精製された塩でなく、天日塩を食べていれば血管が切れるはずがないのです。健康のためには質の良い油は必要です。菜種油の美味しさに惚れて、「俺がやる!」と。喜八郎が作った油を復活させると約束しました。

 

◯ 一切妥協しないものづくり、唯一無二の杉崎学の油

 

買い付け先(契約農家)が無い中、若者たちと耕作放棄地を開墾して、自ら菜の花を咲かせることからスタートしました。同時に全国の農家さんを訪ね歩き、契約農家を探す日々です。

菜種油づくりは、先代から教わった技術で、一切妥協せずにやり続けてきました。

まずは天日干し、そして菜種の選別でさらに気に入る種だけを選別していきます。「ほうろく釜」でじっくり熱を加えていく焙煎は、ガス火でなくあくまで薪での焚き火にこだわります。そして、圧搾へと進みます。

 

《詳しい作り方はこちらから》

https://hourokuya.com/工房見学-「ほうろく菜種油」ができるまで/

 

誰がどんな思いでどういう風に作っているか、次の世代の若者たちに伝わっていくことだから、食の作り手が、手をぬくことはできません。
営業の立ち上がりの時は、道の駅などで来る日も来る日も試食販売の日々でしたね。

まずは美味しさを分かってもらえることから始めました。食べたら、胃もたれやげっぷもしない、ムカムカしない、そんな美味しい油でどれだけ評価を受けるのかを見たくて、それだけでやってきました。

道の駅で実演をしていた時に、「えっ!2,200円もするの?」と驚いて行ってしまったおばちゃんが、後になって「美味しいね」と戻ってきてくれたり。
今では、ほうろくイコール杉崎学だと思っています。
ありがたいことに、油の活動を通して、唯一無二の杉崎学の気持ち、取り組みに共感して応援してくれる人たちが大勢います。

 

◯ ほうろく菜種油とは?

手間を惜しまず愛情をかけて大切に作り上げた、純度100%の美味しい菜種油です。

 

◯ 皆が笑顔になれる「循環型コミュニティ」を目指して

当初から「食を通して若者を元気にしたい」という思いがありました。
学校の教育を受けた子供たちは、マニュアルから外れると心配になってしまうでしょう。自分の場合はそこからの発見が多かったのだけど、今の子たちは不安になってしまう。
子供たちには、頑張ってとは言いませんね。
「外れたっていいじゃない?やってみたいことを応援するから、守るから、遊びだと思ってやってみたら?やってみないと分からないからね」と声をかけるでしょうね。

これまで、子どもも高齢者も障がい者も健常者も垣根なく、皆が笑顔に慣れる場所を作りたいという思いから、「心の駅 和郷(なごみ)朝市」や牧場などを作ってきましたが、朝市や牧場、農園やレストラン、ステージなどを1カ所に集めた「循環型コミュニティ」を作るのが僕の最終目標です。

そのために、もっとほうろく菜種油のファンを増やしていきたい。世の中にほうろくを認めてもらうようにもっと出していく。そしてこの油絞りを伝統継承していき、古き良き日本の菜種油を広めていきたいですね。

油は食材とフライパンをくっつけないための道具ではなく、美味しい調味料なのです。
日本には、素晴らしい調味料、味噌、醤油、みりんなどに加えて、伝統の美味しい油があるんだということを皆さんに伝えていきたいですね。