Vol.05 環境ホルモンについて考えてみよう

ホールフードでいこう 〜ホールフードを知ってもらうための入門コラム〜
written by タカコナカムラ

Vol.05
環境ホルモンについて考えてみよう

忘れてませんか?「環境ホルモン」のこと

1996年,アメリカのシーア・コルボーン博士らの出版した「Our Stolen Future」により注目され、翌年、日本では「奪われし未来」として翻訳版が出版されました。
環境中に放出された化学物質が、多様なホルモン作用に基づいて複雑な内分泌系の機能を微量で撹乱させ、野生生物やヒトへの危害を及ぼす可能性があることを指摘しました。
これを「外因性内分泌撹乱化学物質」といい、俗称として「環境ホルモン」といわれるようになりました。
自然界にはさまざまな異変が起きています。海鳥が大量に死亡したり、つがいになった鳥がヒナを育てることをしない、動物のメス化など、世界では多くの事例が発表されてきました。

国の対応にびっくり

しかし、農水省のホームページには、大きく
「環境ホルモンとは、生体の複雑な機能を調節するために重要な役割を果たしている内分泌系の働きに影響を与え(内分泌撹乱作用)、生体に障害や有害 な影響を引き起こす作用を持つ物質です。
ヒトでは、環境からの化学物質の摂取による 内分泌かく乱作用により、有害な影響を受けたと確認された事例は今のところありません」
と堂々と書かれています。
動物や鳥や魚介類の異常が人間にも影響しないとなぜ言えるのでしょうか。
不妊問題においても、現代の若者の精子の数が激減している報告はされていても、この原因は環境ホルモンは関係ないことと言えるでしょうか。

環境ホルモン使用料ベスト10

環境ホルモンはどのようなものに使われているか、ずばり、最も種類の多いものは「農薬」です。農家が使う農薬だけではなく、シロアリ駆除剤や蚊取り線香、はては、輸入柑橘系果物に塗られる防カビ剤にまで含まれています。
その次は、プラスチックの材料や添加剤。発泡スチロール、エポキシ樹脂は、
接着剤のみならず、塗料、電子部品、複合素材、土木建築などの幅広い分野で使用されています。
学校給食の食器、缶詰の内側のコーティング剤、歯の詰め物、食品パッケージなどさまざまな場面で環境ホルモンは私たちの暮らしを支えているのです。

日本のダイオキシン事件

日本では、1995年に埼玉県所沢市の土壌とゴミの焼却灰から高濃度のダイオキシンが検出され、大きく報道されました。
ダイオキシンはベトナム戦争では枯葉剤として使用され何、十年経っても催奇形性などの健康被害が報告されているのに、国がヒトには影響がないと言い切れるところが驚きです。
ダイオキシンは、ゴミ焼却場から多く発生しています。800℃以上の高温で焼却すると出にくいようですが、ゴミを燃やすこと=ダイオキシン発生というのではなく、燃やすゴミの質に問題があります。
プラスチック、発泡スチロール、ラップ、防虫剤などを低い温度で燃やすとダイオキシンが発生することがわかっています。
「高性能の高温の焼却施設だから大丈夫」とは言い難いのです。そのため何かを買うときに、「燃やしたら有害物質を発生するもの」は極力使わないこともとても大切になってきます。

環境ホルモンが溶出する条件

「温度」と「油」がキーワードです。
環境ホルモンのひとつ、食器や調理器具によく使われるポリカーボネートからは、ビスフェノールAという環境ホルモンが検出。大手メーカーの哺乳瓶からもお湯を注ぐことで環境ホルモンが溶出されています。
100円ショップに入ると、大半がプラスチック製品。ここに熱湯を注ぐことは危険行為であることがわかります。
また、有害汚染物質は、脂溶性のものが多くあります。
脂の多い魚は汚染物質がたまりやすいといえます。米や麦でも、農薬や化学肥料などの有害物質は脂の多い胚芽やふすまの部分に多く含まれる法則があります。つまり、糖質制限食材として人気の高い小麦ふすまパン、全粒粉パン、胚芽パン、ぬか、玄米は安全なものを選ぶ必要があります。

利便性とコスパ

落としても割れないポリカーボネート製やメラミン樹脂の食器は、軽くて耐久性もよいのかもしれません。
環境ホルモンって、色も臭いも味もないものが大半です。つまり、溶出していても、判断ができません。

負の遺産と最近の事件

かつ環境ホルモンはごく微量、たとえば1ppt=1兆分の1という検出限界のごく微量でも極めて深刻な影響を与えることがわかっています。
そして、その負の遺産は、自分一人の人生で消滅することはなく、次の世代へ引き継がれていくことを忘れてはいけないのです。安全な食材を使っていても、調理器具や保存容器を配慮しなければ、意味がないと言えます。
あなたが捨てたたプラスチックは、燃やしてもダメ、埋めても土に帰らず、めぐりめぐって食材として、水として、空気としてあなたに戻ってくることを忘れてはいけないのです。
目を塞ぎたくなるような親子や夫婦の殺人事件、キレた若者の突発的な殺傷事件が後をたちません。
ストレス?家庭環境?それぞれの問題はあることだと思いますが、環境ホルモンの忍び寄る足音・・・聞こえてきませんか?