オンライン三河醸しツアー振り返りルポ

12月末から人生初の「オンライン三河醸しツアー」を配信をスタートしました。
動画では表現できなかったことや撮影秘話をタカコナカムラがお伝えします。

最初の訪問先は、徳川家康生誕の地、愛知県岡崎市の(株)まるや八丁味噌です。
八丁味噌は、岡崎城から西へ八丁(870m)にある八帖町に由来しています。
江戸時代から東海道を挟んで向かいあった2軒の老舗味噌蔵が石積み式の伝統製法を守り継承されています。
6尺の杉桶に3トンもの石を円錐形に積み上げる伝統製法は、訪れる人は誰もが感動を覚えます。

この三河醸しツアーのきっかけになったのは、蔵主の浅井信太郎さんとの出会いから始まったのかもしれません。
10数年前、東京のビジネスショーにまるや八丁味噌出店。浅井さんは、試食や味噌の説明を熱心にされていました。その物知りな語り口調といい風貌といい、私は鉄腕アトムの「御茶ノ水博士!」に見えました。
その後、蔵を一人で訪ねたときの、感動は今も忘れることができません。発酵食マニアの私は、全国各地の生産者を訪ね歩いておりました。

木桶の上に積まれた石積みはまさにピラミッド。蔵の空気は、凛として背筋がピンと伸びる。
米味噌や麦味噌は自分でも仕込み、なじみもあったもの、八丁味噌は東京に暮らす私にとっては、名古屋の名物みたいに感じていたのかもしれません。

蔵見学の後、碧南市の日東醸造を訪ねる予定で、浅井さんは、車で送ってくださることに。車中ずっと、八丁味噌の製法を聞きまくったと思います。
握りこぶしほどの味噌玉を二夏二冬の二円以上の天然醸造で天然の川石を積み上げて作る八丁味噌は、岡崎の気候と風土の中で育まれた日本人の叡智が集まった味噌であると私は、碧南に着く頃には、もうすっかり八丁味噌に魅せられていた。
「これは、みんなに見せたい」あのピラミッドのような石積みは実際に見ないと感動はないと思いぞ・・・・そんなことを思いながら、日東醸造の蜷川洋一社長を訪ねました。
たぶん、取引き上の話より「三河醸しツアーを企画してみたい」とお願いしたと思いますね。蜷川さんは、体育会系の魂なので、浅井さんが横においでになり、私のお願いを断るわけにはいかなかったはずです。

「三河醸しツアー」開催決定の瞬間。

蜷川さんは、1回目から名コーディネーター。ツアーときには、訪ねるツアーのリピーターが多い理由の一番は、蜷川さんに会いたいからだと思います。
三河の生産者のチームワークの良さは他の地域では考えられないほど結束しています。
同業者でも、ライバルではなく、同じ発酵醸造を目指す仲間として助け合い、励まし合う世にも不思議なエリアなのです。
先輩を敬い、各蔵の製法を共に守り伝えていこうとする姿勢こそが三河の発酵醸造を聖地にした理由です。

さて、ここからは映像では伝えきれなかった GI問題についてお話しさせてください。

GI制度は、地域の伝統的な製法や気候・風土などの生産地の特性を生かし、その生産者を保護する目的で、農水省が2014年に施行されました。
夕張メロンや鹿児島の黒酢、神戸ビーフなど100以上も登録されています。
「八丁味噌」は、2018年に登録されたもの、まるや八丁味噌、カクキューの老舗二蔵は、登録から排除されてしまいました。
その理由は、国が定義する八丁味噌は、愛知県内で製造されているもの。仕込み桶の材質は問わず、加温して10ヶ月で出荷しても良い、モチ、おもしも材質は問わないというハードル低い基準となりました。
なぜ?それは、中国をはじめ、海外のニセもの味噌を排除し、愛知県全体の味噌の知名度を全国区にし、出荷量を増やし、輸出を増やしたいと農水省は考えたのでしょうか。
伝統製法をしている二蔵の製法を軸とせず、大量生産の豆味噌を「八丁味噌」というお墨付を国が与えたことは、とても理解できません。
伝統を守り続けた老舗二蔵への敬意というものが全く感じられません。

今回の登録によって、県組合に加入していない老舗二蔵の味噌はGIマークのみならず、「八丁味噌」という名称そのものも使用できなくなる可能性があるというから、さあ大変。
「八丁味噌」というブランド名は残っても、実態は、全く違うものが広がり、国際市場に出回ることをどう考えるのでしょうか。消費者はブランドに何を求めているのか?
フランスの「テロワール」という考え方がGI制度の基本になっています。日本にも「身土不二」という素敵な言葉があります。土地と作り手、別々なものにあらず。
風土、技術、伝統や文化までトータルに考え、その製法を守り品質を継承するためのものであることを、多くの人に関心を持ってもらいたいと思います。

「伝統」は、自然につながっていくことはありません。残そうと思う人が、残す努力を重ねること。何も作らない私を含む消費者は、それを理解し、応援することが必要であると思います。
頑張れ、御茶ノ水博士!

◎三河醸しツアーはこちら

http://whole-food.jp/association/三河醸しツアー/