伝統の日本酒を若い世代へ継承「澤田酒造」

毎回、「三河醸しツアー」の最後の訪問先が常滑市の澤田酒造。
かつてはこのエリアは、灘、伏見に次ぐ酒の巨大生産地だった。
常滑は焼き物としても栄え、酒瓶や酒器も魅力的なものが豊富だったことがわかる。

6代目の蔵主が澤田薫さん。若き日本酒業界のマドンナである。
言葉使い、所作とも非常に落ち着かれ、毎回、ツアー参加者への心遣いには主催者である私は感謝の言葉しかない。
ツアー参加者、とにかく爆買いをされる。もちろん、私もです。最終訪問地の澤田酒造では、ここまでに買い物したものを段ボールに投げ入れたら、スタッフのみなさんが毎回、自宅まで送ってくださるというサービス。
家に届いた段ボールを開けると、破損なきよう味噌やみりん、麺類、菓子、ひとつずつ丁寧に包まれている。この様を見たとき、澤田酒造、薫さんのホスピタリティー、いや企業姿勢に頭が下がっていた。

お父様である澤田会長は毎回、日本酒作りの工程を、落語家ばりの名口調でお話しくださった。それがいつ頃か自然な流れで娘さんの薫さんにバトンが繋がれ、最近は、薫さんがツアーの案内を全て仕切られていた。
澤田酒造も、後継者の問題はなく、ひとり娘の薫さんは、英敏さんという良き伴侶を見つけ、副社長として二人三脚で頑張っておられる。

ツアーの蔵元さん、例外なく、いい娘、いい息子、いい嫁に恵まれている。
澤田酒造は、古い道具を大切に使い、伝統的製法をしっかりと若い6代目が継承されている。蔵を訪ねると、蔵人の若さに驚いてしまう。
かつては、杜氏といえば、ベテランの職人さん。長年の勘や経験で酒仕込みをする。

澤田酒造は、若い蔵人が薫さんたちを中心に、様々なイベントやセミナーも開催されてきた。
地方の日本酒にこだわる居酒屋で「白老」を見つけると、思わず「いい酒置いてますね」と店主に声をかけてしまう私。
その澤田酒造、ツアーロケの直後、2020年11月27日昼間、麹室が全焼。
消防の決死の消火で被害は最小限に抑えられ、怪我人もなく、貯酒、瓶詰めの被害もなく、今期製造された7本の新酒は出荷可能でることは、本当に不幸中の幸いだと思う。
麹室は、酒作りの要であり、澤田酒造は、麹を盛り込みではなく、麹葢という木枠にいれて作る伝統製法にこだわってこられた。その室が消失してしまったのだ。
ロケは、火事で焼失した麹室の前で薫さんのインタビューが収録されている。
薫さんが「撮影してくださって良かったです」と言われたとき、もう言葉がありません。
今季の仕込みも絶望的だったところ、4蔵の協力で、麹製造も可能になった。
どの蔵だって、繁忙期のはず。あっぱれだ。また、ひいきの酒が増えてしまった。

今年の秋の仕込みまでに新しい麹室を再建を目標に、薫さんや英敏さん、若き杜氏たちが一丸となり進まれるという。
心からエールを送り「白老」を飲んで応援します。

◎三河醸しツアーはこちら

http://whole-food.jp/association/三河醸しツアー/