夫婦善哉「中定商店」

愛知県の知多半島のほぼ中央部にある武豊町は、温暖な気候と良質な水に恵まれている。
明治からいち早く鉄道が引かれ、明治32年に外国貿易港として武豊港が開港し、製品や原材料の輸送が容易になり、味噌やたまりの一大生産地になった。
中定商店は、明治12年創業。6代目の当主が中川安憲さん。蔵の後継は娘さんのやよいさんでした。
やよいさんは、家業を継がず、全く違う業種にお勤めをされていました。
その職場で運命の出会い。それが安憲さん。めでたく結婚され、中定商店6代目を継承されました。
そのため、安憲さんは、説明がとてもお上手で、素人にもわかりやすく豆味噌やたまり醤油を語ってくださる。
広々とした蔵は、他には見れないユニークなスペースが工夫されている。
まず、目を引いたのは、木桶を改造したトイレ。発酵食マニアが泣いて喜びます。
「昭三蔵」は、かつては仕込み蔵だったスペースを今は、イベントスペースとして解放されている。人気は、なんといっても手前豆味噌講座。
八尺の木桶がど〜んとあり、テーブルも全て木桶を使ってのオリジナルなスペースは、豆味噌仕込みにぴったりの雰囲気。

中定商店の手前味噌講座が人気の理由。八丁味噌や豆味噌はとにかく、二夏二冬という長期熟成型味噌であり、なかなか素人で仕込むことがむづかしい味噌。そのため、私も中定商店を訪問するまでは、豆味噌の手前味噌はタブー中のタブー。さすがに3年は待てない。
ところが、中定商店の味噌キットは、驚くことに、1年できっちり完成する優れものです。
安憲さんの案内で蔵に進むと、八尺の巨大木桶がいくつも並んでいます。木桶には昭和の日付が入っている。きっと昭和の時代は味噌の消費量は今の何倍も多かったに違いないと思うと、私が怒ることはないのだが、腹がたってしまった。
この日は、わざわざ「味噌堀り」の作業も見せてくださった。豆味噌にも、重石がぎっしりと並べられており、1個は3kg以上もあり、それをどかすだけでも重労働。

最後は直売コーナーへ移動。蔵元にショップがあるのはとても珍しい。
正真正銘の看板娘中川やよいさん。やっぱり、夫婦で登場してほしいと思い、急きょ、出演をお願いした。
普段着のやよいさん「はっぴ着ますね、メイク直してきますね!」と。
伝統、歴史という発酵蔵にありがちな重厚な空気感。やよいさんの明るく、屈託のない笑顔や接客ぶりは、豆味噌やたまりを身近なものに感じさせてくれる。
やっぱり、夫婦で力を合わせ伝統を守られているんだと思う。

愛知県は江戸時代から尾張、西三河、東三河の3つのエリアに分かれます。よそ者の私たちはそのことに気づかず、ずっと「三河醸しツアー」と銘打って開催をしてきた。
知多半島は三河ではない。そのことにモノいいがついたもの、既に編集作業も終わっており、タイトルも本来ならば、「三河・尾張醸しツアー」が正しいのかもしれない。
配慮に欠けたことは、この場をもってお詫びしたい。

尾張、三河、どちらも私たちにとって、大切な発酵・醸造の聖地であることは永遠に不滅です。

◎三河醸しツアーはこちら
http://whole-food.jp/association/三河醸しツアー/