《Interview》chavipelto -チャヴィペルト 中山拓郎さん・かんなさん

Wholefood Interview

chavipelto -チャヴィペルト

中山拓郎さん・かんなさん

−「あの人のために」。美味しさを実感できるオーガニック野菜を届けたい −

 

| chavipelto -チャヴィペルト | 

埼玉県草加市で江戸時代から続く農家で、安心、美味しさにこだわった野菜を栽培、販売しているお店。チャヴィペルト農園は、草加市の住宅街の中にあり、少量多品種の野菜を作る都市型農業を行う。畑とデリ部門でJAS有機の認証を取得し、全国初となるダブル認証。
http://www.chavipelto.co.jp/

 

◯「誰のために作るのか」を大切にする都市型農業

〈拓郎さん〉

江戸時代の半ばくらいから続く、草加の農家の五代目です。父の代から化学肥料は使っていなかったのですが、僕が関わるようになって少しずつ農薬の回数を減らしていき、その頃から特別栽培に取り組んでいました。

もともとは市場出荷していましたが、野菜の値段は市場相場によって変わります。美味しいものができても数が多ければ安くなり、美味しくないものでも数が少なかったら高くなってしまう。味ではなく物量で値段が変わってくる投機的な市場相場の在り方に、どうしても納得がいかなかった。

それに、市場の取引だと、野菜が完全に「モノ化」しているのですよね。工業製品と同じように段ボール1箱いくらの世界。たくさん積めば下の方が潰れてしまって汁が出ていたり…。大切に育てた野菜が、食べ物じゃなくて、「モノ」になってしまって。そんな市場に対して何かおかしいと違和感を抱いていました。

だったら自分たちで販売したいと、チャヴィペルトを立ち上げました。それ以来、「誰のために作るのか」を常に意識しながら農業をしています。

チャヴィペルト農園は、1年を通して70種ほどの野菜を育てる少量多品種の都市型農業ですが、最初に都市型農業の可能性を見出してくださったのはタカコ先生です。ホールフードと出会ってから、農場も変わりました。

「ベジブロスを取るのだったら野菜をまるごと使うのだから、元々少なかった農薬だけど、更に減らして天然系のみにしよう。」

「ホールフードライフをちゃんと実現していくには、僕たちがどんな野菜を作っていかなければならないのか?」などを考えながら農業に取り組んできました。

ホールフードには理念がありますよね。明確な指針があるから、それに合わせて作るものを考えるのは難しくはありませんでした。お店で使う野菜とも連動しているので、オーガニックで手に入りにくい野菜があれば、自分たちで作るのが一番早いじゃないですか。

目指すべき姿へ、現状の農業からどんどん近づけて行こうと、自分たちの作るものも変わっていきました。

〈かんなさん〉

実は、ホールフードスクールに出会う前から、タカコ先生の本をチョイスしていました。昔は本は本屋以外には見かける事はなかったのですが、野菜と本を一緒にし売り場に並べたいと思い、知り合う前にタカコ先生の本を選んでいたのです。

その後、ご縁があり味輝パンの荒木さんとお仕事をすることになったのですが、お店にいらっしゃった時にタカコ先生の本を目にして、「この人知っているよ。今度会うといいね。ホールフードの教室やっているから」と、教えてくれました。内容を調べてみたら、私が目指すもの、そのままがホールフードだったのです。この道に進むべきなのだな、会うベくして会ったのだと感じました。

日々、家族の三度三度の食事を作る中で、料理のアイディアはいっぱいある、これを活かす方法は何かあるのかな?とずっと考えていました。そこで、まずはお惣菜作りを始めました。

日によって採れる野菜、使える野菜も違います。今日は寒いから温かいもの食べようとか、今日は酢が食べたいという感覚を大切にしているので、その日に食べたいものを作る五感に任せたスタイルは性に合っていたのだと思います。

アイディアだけは絶対に負けないと思っていました。

ホールフードスクールに通い始めたのはちょうどその頃です。チャヴィペルトを立ち上げてからはがむしゃらにお店をやっていたので、10年くらいどこかに出かけたことがありませんでした。それでもずっと、何かを学びたい、進化し続けたいという気持ちが強くあったので、ホールフードにまず行かなきゃと思い、スクールに通うことにしました。

基礎コース、応用コース、マスターコースまで修了しましたが、ホールフードって、単なる調理方法ではないのですよね。私にとっては生活の全てで、調理法はもちろん、ナチュラリクリーニング、環境のこと、経皮毒や添加物の話、全てが興味のあることだったので、教室は楽しくて仕方がなかったですね。ずっと居たかったくらい!

「どこか妥協しなければいけなかったオーガニック」が、「実感できる美味しいオーガニック」へ

 

〈拓郎さん〉

かんなさんが使いたいと思う野菜、料理に彩りをつけていきたい野菜をと、リクエストを受けて作っていたのが初期の頃。そして、ホールフードと知り合ってからは、いろんな方とネットワークができていきました。

昔は、お付き合いのあったレストランは2ヶ月くらいメニューが固定だったりするので、野菜はこのサイズでとか、これじゃないといけないとか、シェフからの指定が多かったのですが、今は、大きくできてしまったら大きく調理をするのが好きなシェフに届けよう、小さくできれば小さな作品を作るレストランのシェフが喜びそう、と、個別に対応することができています。

野菜を卸している南青山のアクアパッツァのシェフたちも、1ヶ月に1回くらい、野菜の季節が変わる時に必ず畑を見に来てくれて、

「この時期にこんなメニューを作りたいのですがこんなお野菜できますか?」

「チャヴィの農場とアクアパッツァで一緒に商品を作りましょう」という話にも発展しています。

都心から1時間以内の農場であれば、朝に野菜を収穫して午後には飲食店に届けられ、いわば「都会の畑」にもなり得ます。

東京のレストランには、東京の旬というものがなかったのですが、15キロ圏内だと同じ気候なので、チャヴィの畑から、東京の季節のサラダ、旬の野菜のパスタができます。その季節のもの、苦いのも甘いのも、全て料理で表現してもらえる。これが都市型農業の強みだと思いますね。

オーガニックだと大きさもまちまちで、種も固定種中心に作っているとばらつきが出てしまう、逆にそれによって、シェフや卸先のお店の好みに合わせて野菜を届けることができるようになりました。今では畑にいると、シェフたちの顔が浮かびますね。「誰のために作っているのか」を日々感じながら農業ができています。

これまで、「どこか妥協しなければいけなかったオーガニック」が、「実感できる美味しいオーガニック」へと進化できたのです。僕らがオーガニックの認証を取ることによって、オーガニックの素材を使うお店にも付加価値が生まれていく、それが都市農業の1つの形になっていくのかなと思います。

 

〈かんなさん〉

できた野菜をそのままちょうだい、と言っていただけて、今は嬉しくてしょうがないですね。野菜の全てを受け入れてくれる、ありのままを調理してくれる方が増えたのと思います。

分かってくれる方は、これは甘味が足りないよね、などと切り捨てることなく、時期による変化を受け入れて、どう表現しようか?どう活かそうか?と考えてくれるようになりました。

いろんなものを全部使ってくれる気持ちが嬉しいですね。農家冥利に尽きます。

 

〈拓郎さん〉

少しずつ、僕たちの理念がシェフにも伝わってきたということだと思います。たとえ価格が少し高くても、葉っぱも全部使えて、別のメニューもどんどん生まれていくから、レストランからすると結局単価が安くなるということが、今では増えてきました。

現場のシェフたちが、僕たちの野菜をピューレにして料理の隠し味として入れると料理が引き立ちます!と言ってくれるのは、嬉しいですね。

 

◯畑と人の距離が近い、畑の愛が溢れる場所を作りたい

〈かんなさん〉

ひと昔前は、農場と人が住むところは近いところにありましたが、草加にも都市開発が入り、そこに距離が生まれてしまいました。

これからは、畑と人の距離をもっと縮める環境、場所を作りたいですね。

これまで収穫体験を続けてきた中で気づいたのは、野菜に触れられない子供たちがとても多いということ。子供たちに野菜を採って食べましょうと言うと、野菜に泥がついているから汚い、虫が1匹でもいたらダメとか、泥に対する抵抗があって、野菜に触れられない子供が年々増えてきたのです。土を触ると汚れちゃうからと、土の中で育つ野菜の葉っぱの一番上を持って引っこ抜こうとするので、抜けない〜となったり、野菜が折れてしまったり。

土は全ての始まりなのだから、このゆがみを何とかしたいと思っています。

そして、現代は孤食の人も多いでしょう。みんなで野菜を採って、野菜を切って、ご飯を作って一緒に食べる、アリス・ウォータースのエディブルスクールヤードが、現代版として形を変えたような場所で、畑のエネルギーを感じながら食事をして、時間を過ごしたりしたいですね。

ある日、それまで笑ったことがない、野菜を一切食べないという子が、農場に来たことがありました。収穫して料理した野菜に初めは口をつけなかったのですが、みんながちょっとずつ野菜を口にし出して、その子は3品目くらいから食べたら、美味しい、美味しい、もうちょっと、と。全く表情のなかったその子が、野菜を食べたら笑顔になったのです。そして次の日からは、給食で野菜を一切残さなくなったそうです。そんなことってあるんだ!って、驚きましたね。

もともと思っていたことですが、畑や野菜には力があります。そして子供たちには、自然にそれを感じ取って、変われる力があります。だからこそ、「ちゃんとした」ご飯を食べさせてあげたい。

年齢も関係なく、みんなが集まれる、畑の愛があふれる場所を作りたいなと思っています。

chavipelto2021  -農園の紹介動画-

https://www.youtube.com/watch?v=O1ARsVGGw3A