⦅interview⦆ 小手靖子(こて やすこ)さん −三鷹の駅近で、量り売りとまちの台所「野の」をオープン!−

巻頭インタビュー

「ホールフードなひと。」vol.29

小手靖子(こて やすこ)さん

−三鷹の駅近で、量り売りとまちの台所「野の」をオープン!−
アイコン
量り売りとまちの台所「野の」
東京都三鷹市下連雀3⁻33-8
TEL:0422-66-2855
野の | 量り売りとまちの台所 | 三鷹市 (nonohakariuri.wixsite.com)
ホールフードスクールの卒業生でもあり、事務局スタッフとしても働かれていた小手靖子さん。今年、10月半ばに個性豊かな仲間たちと「野の」というお店をオープンされたと伺い、興味津々で足を運んできました。量り売りが特徴とのことですが、一体、何を小売りしているのでしょうか? 場所は、JR三鷹駅の南口から徒歩5分。まっすぐの中央通りを抜けて果物屋さんの角を右側に入ったところに、ガラス張りの可愛い店舗がありました。入り口すぐにある開放的なカフェスペースでは、コーヒーの豊かな香りがふわり。小手さんを探すと、奥にある量り売りスペースに懐かしい笑顔の女性が立っていました。
こて様03
「野の」は、8人の仲間たちで共同経営をされていると伺いました。まずは、お店のコンセプトから教えていただけますか?
私たちは、「合同会社 野の」として6つのテーマを柱としています。1つは、量り売りの提案です。必要なものを必要な分だけ購入することができます。2つめは、働き方を考えること。トップダウンではなく、働き方を変えながら地域に根差す活動をしていこうと思う8人が集まりました。3つめは、地域のつながりを大切にすること。4つめは、食の地産地消をめざすこと。5つめは、ごみ問題と向き合うこと。6つめは、自然の中で生まれた手仕事を大切にしていくことです。そのテーマを表現・体現するために「量り売りとまちの台所 野の」という実店舗をオープンさせました。
なるほど。「合同会社 野の」としてのコンセプトを集約させたプラットホームが、「量り売りとまちの台所 野の」というお店になるわけですね。
はい。量り売りは、必要なものを必要な分だけ購入できるのでフードロスを減らすことは大前提なのですが、個包装されていない商品を扱うことでプラスチックフリーやごみを減らすことを目指しています。そのため、お店では繰り返し使える容器や瓶をお持ちいただくようにアナウンスしながら、手ぶらで来られた方でも環境に優しい容器などを購入することもできます。長くお使いいただけるように次に来店される際にご持参いただけるようにお伝えしています。量り売りでは、なるべく地場のもの、近くのもの、日本人に馴染みのある日常使いの食材などを取り扱っているのも特徴です。
子どもの絵
地元の子どもたちがガラスドアに描いたカラフルな絵に和む。
雑貨の棚
量り売りの食品を入れるのにも便利なエコグッズも充実している。
削り器
かつお節は、「タイコウ」の節を自分で削り、少量のグラムで購入可能。
お店に来るまで量り売りでは、何を買えるのかと思いを巡らせていましたが、かつお節やスパイス、調味料まで小売りされていて驚きました。
かつお節は、袋で買うと結構いいお値段ですし、節を削る方も減ってきました。ここでは、節を削る機械があって少量ずつ販売しています。グラムで計って購入できるので、かつお節って軽いですよね。だから、結果的にかなりお得なんです。スパイスも1瓶使い切れないという方も多いですし、調味料に関しても長く置いておくと酸化してしまいますから、使いたい分だけ購入できるのは、味の劣化を避ける意味でもいいですよね。
オイル
余りがちなスパイスやオイルもその日に使う分だけ購入できる。
量り売りコーナー
三鷹でとれた希少な小麦粉や麦茶、ナッツなど
さまざまな食品を量り売りで販売している。
新鮮な季節のお野菜や雑貨、素敵な器なども販売されていてお店にいて飽きないですよね。
ありがとうございます。6つのテーマにもある地産地消や手仕事を大切にしたいというメンバーの思いから、地元の生産者さんとの繋がりを広めています。それぞれの生産者さんにもファンができてきて、入荷を楽しみに通ってくださる方も増えてきました。
野菜3
日替わりで生産者が変わり、季節の野菜を購入できる。
なぜ、その8人で店を共同経営することになったのですか?
全員が「野の」だけでなく、環境活動、まちづくり、食やボランティアなど。他の仕事をしながら三鷹という地域を通して繋がっていった仲間です。三鷹市は、市民活動がとても盛んな街。あらゆるところに勉強の場がいっぱいあるので、市民同士での交流が深い。うちのメンバーにも、三鷹中の人たちを繋げて歩くような仕掛人がいます(笑)。他にも、そういう人がたくさんいて、とにかく誰かと誰かが繋がっているような感じなんです。
ふと気が付いたら、同志が繋がったということなのですね。
本当にそんな感じです。最初は、実店舗がなくマルシェなどからスタートしました。ある時、中心となるメンバーの1人に、「空いているスペースがあるんだけど三鷹のために何かできないかしら?」と、相談を受けたのです。私は、ホールフードスクールを卒業後に友人と西荻窪にあるシェアキッチンで食事を提供していましたので、このスペースだったら同じスタイルの店舗ができるかもしれない。私の友人にも声をかけて、いろいろなところから8人が集まりました。
メンバーは、どのようなことをされている方々なのですか?
一言では言えないほど、皆さん活動の場が広い方ばかりです。地域や自然環境などに関心が高いのは共通ですが、中には大学生もいます。とにかく、面白いご縁で繋がっていきました。ちなみに国分寺にある量り売りの店で店長をされていた人が、ここでも店長をしています。きっかけは、「野の」の主要メンバーの家の裏にたまたま住んでいたという不思議な出会い(笑)。本当に、そんなことあるの??ってことが続いてメンバー同士が結びついた感じなのです。
それは面白いですね。人生の目的が一緒だと、自然とご縁は結ばれることを実感します。「野の」は、シェアキッチンと量り売りという2つの表情があるのがいいですね。
これからは、小手さんもキッチンに立つことがあるのでしょうか?
はい、11月の中旬には、毎週木曜日を担当します。季節のお野菜を使いながら、「野の」で扱っている調味料や食材を使ったご飯を提供していく予定です。
レンタルキッチン
シェアキッチンで小手さんの笑顔をみられる日も近い。
最後に、ホールフードスクールで学んで
いま、生かされていることを教えていただけますでしょうか。
やはり生産者の方々との繋がりは大きいですよね。スタッフ時代に、タカコ先生が主催されている三河醸しツアーなどにも参加させていただきましたが、生産者の方々がどのような気持ちで作っているのかを知ることに価値があると思いました。実際にお店で陳列されているものを買うだけではなく、愛着もわきますよね。以前は調味料1つにしても、スーパーなどで値段を優先して選ぶようなところがありました。でも、ホールフードに通ってからは、添加物の有無などを確認しながら、手作りの良さを優先して選ぶ目を養うことができたと思っています。「野の」でも、その経験を生かして店舗に立たせていただいています。
***
インタビューを終えて、さっそくナッツの量り売りに挑戦してみた。数種類のナッツを少量ずつボウルに入れてミックスナッツにしたが、どこか駄菓子屋さんに行ったようなワクワク感があった。小売り販売の良さは、いま食べ切れる分だけ買うことができるので、個々の暮らし方がよりスマートになるのも大きなメリットだと感じた。小手さんとお話をしている間に地元の若いママが、乳児期のお子さんを連れてトイレを借りに来る場面があった。地元密着の憩いの場であることをほほえましく感じながら、「野の」に関わる8人のメンバーがこれからも三鷹中の人々を巻き込んで大きな輪として繋げていくことが楽しみだ。
撮影・文/川越光笑(たべごとライター)
ナッツ2