Vol.06 魔法の野菜だし ベジブロスを始めよう

ホールフードでいこう 〜ホールフードを知ってもらうための入門コラム〜
written by タカコナカムラ

Vol.06
魔法の野菜だし ベジブロスを始めよう

What’s ベジブロス?

ベジブロスは、野菜(Vegetable )の出汁(Broth)のことです。
ホールフードなベジブロスは野菜の皮や根っこ、種やワタなどを使って野菜の出汁を取ります。
ファイトケミカルを効率良く摂取できる魔法の野菜出汁として注目されています。

ファイトケミカルとは?

ファイトケミカルとはギリシャ語で“phyto”は植物、“chemical”は化学物質という意味。植物が持っている天然の化学物質で第7の栄養素として注目されています。
ファイトケミカルの種類はわかっているものだけで1万以上ありますが、まだ解明されていないものも多々あります。
その成分や効果もさまざまで、多くの成分を組み合わせて取ることでより大きな効果を発揮するといわれています。
ファイトケミカルは野菜の皮や根っこ、種などに多く含まれています。
野菜をまるごと使うことがファイトケミカルを効率良く摂取することになります。

ベジブロスがカラダにいい理由

植物は動物と違い、動くことができません。外敵である害虫や紫外線から身を守るために外側に最も強い成分でガードしています。その苦味成分がファイトケミカルです。
ベジブロスの材料は、食べられる可食部ではなく、皮や種、根っこというファイトケミカルの豊富な部位を使うことが理想的な出汁を取ることができるのです。
さらにベジブロスの優れているところは、調理法にあります。
ファイトケミカルは細胞にしっかり守られているため、普通に野菜を食べているだけでは胃腸で吸収されにくく、大部分が排泄されてしまいます。
野菜の細胞壁を壊すことで、ファイトケミカルを吸収されやすくする調理法です。「コトコトゆっくり煮出す」ことがまさにファイトケミカルを最も効率良く吸収するための調理法です。
ファイトケミカルは熱に強いため、時間をかけてゆっくり煮込むことで細胞壁を壊して出汁に溶け込ませることが可能となります。
血液中の抗酸化力を測定できるBAPテストという血液検査の結果、年代の違う男女で実施したところ、ベジブロスを飲む前と後では、血液中の抗酸化力が全員アップしました。

ベジブロスの歴史

2019年でベジブロスを取りはじめて30年を迎えます。
始めるきっかけになったのは、1980年半ば、ジャーナリスト丸元淑生さんがシステム栄養学として野菜出汁を提案されていました。
私は丸元さんの考え方の基本になる「生命の鎖」(飛鳥新社)にとても感動しました。
食べものがその人のカラダを作っているだけではなく、何を食べるかで世界が変わるという表現に衝撃を受けました。
私が選んだ食べものが地球上の別の国でどのように作られているのかなど考えもつかないことでした。そのことで、原産地の環境まで影響を与えていることを丸元さんの本から学びました。
それをヒントに試行錯誤をして、今日のベジブロスの取り方に行き着きました。
それでも、ベジブロスには王道がなく、私がやりは始めて改良を重ねていることにしかすぎないため、日々、進化させています。
新しい発見もたくさんあります。
ベジブロスは、まさに私の提案する「ホールフードライフ」を表現するものだと感じています。
「Whole Food(ホールフード)」とは、直訳するとまるごとの食べものという意味ですが、健康で豊かなな暮らしを望むとき、食べものだけ気をつけるのではなく、Life(暮らし方)も、農業のことも、環境もまるごと考えていかなければならないことに気づきました。「Whole Food Life」をショートカットして「Whole Food(ホールフード)」を表現しています。
ホールフードな食べものの選び方は安全で本来の作り方をしているものだと考えています。

ベジブロスは野菜の皮や根っこを使うため、安全なものを選んでほしいのです。
残留農薬の心配もあります。
ベジブロスはまさに「ホールフード」の考え方に適応した調理法の代表選手。
ベジブロスは野菜のリトマス試験紙だと思っています。
つまり、健康な土から育てられた野菜で作るベジブロスは甘みを感じ、奥行きのある優しい味の野菜出汁ができます。ところが、輸入野菜や農薬、化学肥料で育てられた野菜は、えぐみや苦味のあるベジブロスができてしまう。
ベジブロスを取り始めると、野菜の素性が気になります。そしてできれば安全な野菜を選びたいという気持ちが芽吹いてくるはず。
「有機野菜は高い〜〜」とわかっていても使えないと嘆く前に、ベジブロスをはじめるとお肌もキレイに、免疫力がアップして、風邪も引かなくなったという声をよく聞ます。そしたら、少々、高い野菜でもコスパは良くないですか?
エステ通いも減り、サプリも不要になります。ベジブロス人口が増えることで、国産野菜の消費が増え、農業に関心を持ってくれる人が増えることがベジブロスのゴールです。
私の美容と健康は、日本の農業の応援につながっています。

ベジブロスのここがすごい!

1)美肌効果

  カラダの中から抗酸化力をアップさせると、皮膚の新陳代謝を活性化させるので、肌のシワ、シミにも効果を発揮。毎日のベジブロスでぷるぷるの美肌に。

2)ガン細胞の抑制

  ファイトケミカルには、強力な抗ガン作用があります。体内の細胞レベルでDNAや遺伝子情報にエラーを生じさせる「ガン化」を未然に防ぐ効果があり、医学界でも注目されています。

3)パワフルな抗酸化力

 カラダの中の老化物質「活性酸素」の増加を防ぎます。さびの原因となり、高い抗酸化力は長寿のキーとして予防医学では注目を集めています。

4)免疫力アップ

野菜の皮や種などの栄養分の豊富なところをまるごと使って煮出していくので、細胞壁がこわれ、野菜の栄養をまるごと摂取することが可能です。消化吸収しやすい形でいただけるため、免疫力がアップ。

野菜をまるごと使うメリット

野菜は、皮や葉、根、茎などそれぞれ栄養素も異なり、役割も違います。
皮や葉は紫外線や虫から食べられないようにするために、野菜のいのちを守るバリアを持っています。それがファイトケミカルといい、すぐれた抗酸化成分を含んでいます。人間にとっては、多くの美容、健康効果があるわけですが、野菜たちからすると、いのちを守ったり、次の世代へいのちをつなぐための大切な成分なのです。
野菜には「生長点」があります。これからいのちを育むための大切な部位で、栄養素もファイトケミカルも多く含んでいます。
でも、これまでは、調理の過程で捨ててしまっていたのです。
ベジブロスは、今まで捨てていたこれらのエネルギーのもとを使って煮出す、ホールフードを表現する調理法です。
野菜のどの部位も捨てることなくまるごと煮出して栄養分をすべてを抽出する画期的なメソッドとして注目を集めています。
野菜のパワーを最大限に摂取してみませんか?

ベジブロスの野菜の組み合わせ方

美味しいベジブロスを作るには、いろんな種類の野菜を組み合わせる方が美味しく、滋味深い味わいになります。
種類が多ければ多いほど、美味しいベジブロスが取れます。
ファイトケミカルは、植物の皮に多く含まれます。色素成分で分けると7色に分類されます。別々の種類のファイトケミカルを総合的に使う方がバランスがよくなり、大きな効果を発揮します。
ファイトケミカルの種類を覚えなくても、「見た目」でベジブロスの野菜が色がカラフルでキレイだとバランスが取れているはずです。
特に入れてほしい野菜は、たまねぎの茶色の皮です。ケラスチンというファイトケミカルは血液をさらさらにしてくれる薬膳食材のひとつです。

<注意する野菜>

アブラナ科の野菜は、硫黄成分を多く含むため、独特の風味になります。ブロッコリーやカリフラワーの茎はどうしても余分なので、つい沢山入れてしまうので注意をしましょう。量は少な目に。
同じ硫黄成分を含む、にんにく、ニラ、らっきょうなども入れすぎると強い臭いのベジブロスになるので、注意しましょう。
じゃがいも、さつまいもなど、でんぷんのある芋類の皮や切れ端は、入れすぎると出汁がドロドロに粘度が出てしまうので、入れすぎないように注意します。
色の出る野菜、ビーツ、茄子の皮、さつまいもの皮などは入れるとベジブロスが染まってしまうので、料理を選びます。この色もファイトケミカルなので、美容的にはおすすめです。色を気にしないカレーやビーフシチュウなどに活用しましょう。

<野菜の種類がさみしいとき>

出汁が出るもの、出汁昆布、煮干し、干ししいたけ、干し舞茸、干し海老などを入れて旨味を足すようにします。
香りの出る野菜が少ない場合、ローリエや黒粒胡椒、ドライハーブなどを少量加えるとよいでしょう。

りんご(アントシアニン)、赤パプリカ(βカロテン)、トマト(リコピン)、いちご(アントシアニン)ビーツ(ベタシアニン)

ほうれん草(βカロテン)、小松菜(βカロテン)、パセリ(クロロフィル)、ピーマン、ブロッコリー(スルフォラファン)

黄色パプリカ、とうもろこし、レモン、ターメリック、黄色パプリカ、アボガド

人参(βカロテン)かぼちゃ、オレンジ、マンゴ、柿

大豆(イソフラボン)、たまねぎ(ケルセチン)、大根(イソシアネート)、じゃがいも、かぶ、ニンニク(硫化アリル)、きのこ(βグルカン)、カリフラワー

茄子、ブルーベリー(アントシアニン)、ぶどう(アントシアニン)、紫たまねぎ、紫キャベツ、赤じそ

ごぼう(クロロゲン酸)、ヤーコン、じゃがいも、黒豆(アントシアニン)

ベジブロスの作り方(実践編)

材料 1リットルのベジブロスを取る場合
野菜の切れ端 両手一杯分が目安
水 1300〜1400cc
酒 少々

取り方

1)鍋にベジブロス用の野菜を入れて、酒を入れる。
2)弱火でゆっくりとコトコト煮る。アクもファイトケミカルなので、取らないようにしましょう。強火で煮ると野菜が煮崩れて濁ったベジブロスになったり、エグ味が出てしまいます。
3)ざるの下にボウルや鍋を置いて、こします。
  ベジブロスの完成です。

保存方法

粗熱が取れたら容器に移して3日程で使い切りましょう。
冷凍も可能です。製氷皿に入れて凍らせると必要な量だけ取り出しやすいので便利です。
こさないで冷凍も可能です。冷凍することで、旨味もよりアップします。使うときには、解凍してこしてから使います。

ベジブロスの材料の集め方

料理をする前に、野菜は全て50℃洗いをします。皮や根っこ、切れ端も50℃洗いすることで、アクが取れ、日持ちも長くなります。
水気をよく切ってから、ファスナー式の袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存。
かぼちゃのワタ、トマトのヘタなど水分の多いものは、別に保存したり、早めに使うようにしましょう。

ベジブロス入門編 ちょい足し

ベジブロスは野菜のエキスが凝縮した万能出汁ですが、料理に使うだけではなく、お茶代わりに飲むこともオススメです。

塩こうじ、塩、味噌、梅干し、醤油を少量加えるだけで、インスタントベジブロススープの完成です。洋風スープには、ケチャップや粉チーズ、オリーブ油を少量加えても美味しいです。
忙しいときに利用するカップスープやカップ麺、インスタントラーメンのお湯の代わりにベジブロスを使うと栄養バランスを整え、美味しくいただくことができます。

ベジブロスの入門編 まず作ってみよう

①ごはんの水をベジブロスで
 白米をベジブロスで炊いてみましょう。ほんのり色がつき、見えない野菜をご飯と一緒に摂ることができます。野菜嫌いのお子様にどうぞ。
②味噌汁やスープに
 野菜出汁として、いつものスープに使いましょう。固形スープの素など不要になります。
③万能出汁として活用
 ベジブロスは癖がなく、和洋中イタリアン、フレンチと料理ジャンルを選びません。水を使うものは、全てベジブロスに置き換えていろいろな料理にチャレンジしてみましょう。
参考本 ベジブロス関連本はウエブ通販、ホールフードショップ「まるごと」で販売しております。

ベジブロスのその先へ

ベジブロスを基本出汁として料理をする人を育てているのが
「タカコナカムラホールフードスクール」です。
カラダとココロと環境にやさしいをテーマとしたホールフードの理念に基づき、料理メソッドだけではなく、食の安全、暮らしの安全のための知識を学ぶことができます。
スクール事業を始めて、16年になります。
人にお金と大切な時間をいただき、料理を教えることは、容易いことではありませんでした。教えるということには真摯に向かい合ってきました。
それは、常に教える側は、学びを忘れてはいけないし、何よりも、健康でイキイキしなければ、なんの説得力もありません。
これからの未来をつなぐ人に受けてほしいカリキュラムを作り、
オーガニックな人を育てる日本で唯一の料理教室だと自負しております。
盛ったなあ〜〜〜〜。
ホールフードコースのほか、毎月ベジブロスや50℃洗い、発酵食「甘酒」や「旨塩麹」、「50℃洗い」そして、「ぬか床」「梅干し」「手前味噌講座」なども季節ごとに開催しております。