父子で醸すみそたまり醸造元「南蔵商店」

知多半島のたまりスポット南藏。

私は、10年以上前に、某企業向けに、今回訪問する「南藏」のたまり醤油のレシピを担当させていただいた。届いたたまり醤油で、ドレッシングを何品が考案し提出。

初めて南藏を訪ねた際、使いこなされた木桶ながら、手入れがしっかりとされ、みごとな美しさに唖然とした。仕込みの丁寧さはもう言葉にならないほどの感動だった。
たまり醤油のレシピ開発を請け負った際、この美しい木桶や仕込みまで知ろうとしなかったこと、通り一編のレシピを作ったことを恥じた。
5代目青木弥右エ門氏の説明を聞きながら、なんと申し訳ないことをしたかと胸が詰まってしまった。
青木さんは、誠実で他の蔵主さんのように饒舌ではないが、ご自身の醸す製品について、本当に、真摯に向き合い、ひとこと、ひとことに重みを感じる。
近年は、6代目となろう青木さんの息子さん良之さんが東京農大醸造科を卒業され、父子で伝統を守られている。
戦後、先代は、科学的な管理技術が豆味噌やたまり醤油の製造に不可欠になると感じ、子供達に醸造の専門の最高学府で学ばせ、国産大豆100%、自然塩、長期熟成の製品作りを徹底研究された。

しかし、青木さんはそんな知識を光らせることはみじんもない。
良之さんは、ジャニーズ系のルックスにもかかわらず、祖父、父親の背中をずっと見て育ち、家業に誇りを持って、取り組まれている。
私は、豆味噌やたまりのわからないことは、つい良之さんに質問ぜめ。さすが東京農大卒、どんな質問にも的確に答えてくれる頼もしい6代目である。

たまり醤油は、塩水の割合の違いで十水たまり、五分たまりの種類を分けている。一般の醤油と違い、桶の上から見ると、ほぼ味噌、固体。醤油蔵で見る櫂入れというもろみを混ぜる工程の代わりに、「汲みかけ」という作業が必須。木桶に筒をいれて、底から滲み出てくるたまりをひしゃくですくい、重石の上にかける重労働の作業だ。
最近では、ツアーの際、若い良之さんが担当される。木桶の下から、その様子を眺めると、うるっと来ます。
心から「頑張れ!」と拍手を送りたくなる。
私の息子と同じ年代で、家業を継ぎ、一生懸命に汲みかけをする姿をみると、後継者不足の農家や製造業の問題は深刻だ。儲からないから?将来が見えないから?
私は、「親の背中」に原因があるように感じている。
モノ作りは、辛い、苦しいものかもしれない。でも、楽しさや充実感を背中は語ってくれる。
その姿勢がないことは、後継者は育たないと思う。

近年のヨーロッパでの「グルテンフリー」ブームで、小麦を使っていない豆味噌やたまり醤油は輸出量が増えているそうだ。
世界の舞台にでるときこそ、南蔵さんのような伝統製法のたまりや味噌であってほしい。

◎三河醸しツアーはこちら

http://whole-food.jp/association/三河醸しツアー/